都市ジオラマの魅力とは?

都市ジオラマの魅力とは?

なぜ私は都市に魅力を感じるのか

こんにちは。都市モデラ―MAJIRIです。
普段私は東京や大阪といった日本の大都市の風景を切り取ったジオラマを制作しています。
しかしなぜこんなにも都市風景に惹かれ、都市ばかりを作るのか、私自身の中には曖昧な動機はありますが、
これをきちんと言語化したことはあまりありませんでした。

ここでは私が感じている都市ジオラマの魅力を言語化することで、皆様にもより都市ジオラマを楽しんでいただけるのではないかと考えています。
私の感じる都市の魅力に共感や再発見をいただけると嬉しく思います。

さて、私が感じる都市ジオラマの魅力は大きく3つに分けられます。
1. 都市ジオラマは田舎のジオラマに比べて数が少ない
2. いつも見ている風景だからこその魅力
3. 歴史が複雑に折り重なった空間の魅力

ここからこの3つを順にお話していきます。

1. 都市ジオラマは田舎のジオラマに比べて数が少ない

あくまで私の主観ですが、人口密集地の都市部を再現したジオラマよりも、山や川といった人工物があまり多くない田舎を再現したジオラマの方が多く作られていると感じます。
この要因は都市ジオラマの方が建物など購入しなければならないパーツ点数が多く、お金がかかることが大きいと考えています。

私は子供のころから都市ジオラマに魅力を感じネットや雑誌を見漁っていましたが、印象に残る作品はかなり限られていました。
当時は「だれかもっと大規模な現代の都市、東京や大阪の大ターミナルを作ってくれないのか!」と待ち続けていました。
しかし私自身の好奇心を十分に満たすジオラマはめったに現れません。
「それなら自分で作ろう。」
そう思ったのが、3DCADでの設計やレーザーカッター、3Dプリンターの技術を手にしていた大学生の時です。

建物も自作すれば安く済む、CADで設計して機械で出力すれば高精度を短期間で実現できる。
おそらくそういった条件がそろったことが都市ジオラマを作るきっかけになりました。

ただ、私自身はずっと見たかった都市ジオラマだけど、世間の人は別に面白いと思わないんじゃないか?
だから田舎のジオラマの方が多いんじゃないか?作り始めた当初はそういった疑念もありました。

しかし渋谷や新宿を作ってみて多くの方の肯定的な反応を見るに、今となってはその疑念は完全に払しょくされました。
自分が見たいと思ったものを作って、多くの方にも楽しんでいただける。こんなに喜ばしいことはありません!

そこで次に気になるのは、なぜ人は都市ジオラマに魅力を感じるのかについてです。

2. いつも見ている風景だからこその魅力

「いつも見ているような風景をミニチュアにしても意味ないんじゃないか?」
都市ジオラマにはそんな意見が付きまといそうです。

しかし私はこれは違うと痛感しています。
イベントで展示すると、「ここいつも通勤で通ってます!」「新宿駅の下ってこうなってるんですか!」
といった言葉と共に楽しんでいただける方が本当に多くいらっしゃいます。

ミニチュアの魅力とは、いつも見ているものを違う角度から眺められること、これだと思います。

都市を俯瞰することでいつも見ている風景でも新しい発見がある。
昔通っていた場所を俯瞰して当時の回想に浸る。
その場所には一人一人の物語があり、作品の中にそれぞれの価値を生むのです。

それが都市ジオラマの魅力であり、私が人口密集地を作る大きな動機ともなっています。
その都市の特長をできる限り忠実にとらえるべく細部まで作りこんでいますので、ジオラマを見かけた際には現実の思い出などにも結び付けつつお楽しみいただければ幸いです。

3. 歴史が複雑に折り重なった空間の魅力

最後に私が感じる都市の魅力の根底にある部分をお話します。
都市とは人間が密集して快適に過ごすために作り上げられてきた空間ですが、そこに味気無さを感じる人も多いでしょう。
特に東京に代表される日本の大都市は近代のビルが乱立し、頭上には都市高速が張り巡らされた無機質な都市が形成されています。

しかし東京の風景は本当に無機質で味気ないものなのでしょうか。
私はその無機質さが無秩序に絡み合った空間である東京にこそ、世界の他の都市にはない魅力を感じています。

パリやニューヨークは、より昔に街が完成し地震をはじめとした大災害がないため古い建物が多く残されています。
もちろん歴史的建造物は非常に美しいですが、なぜ美しいとされるのか。
それはその都市ならでは、その時代ならではの建築方法、さらに言えば、そこに歴史があるからこそ美しいとされているという側面があるのではないでしょうか。

対して東京の街並みは地震や戦争で当時の建物の多くが失われたこともあり、歴史ある建造物は少なくなっています。
それでも江戸に形作られた東京の歴史は川などの地形に多く残され、そしてその土地の上に近代の建築物が建てられたことでまるで地層のように歴史が折り重なり、独自の街並みを形成しているのです。

例えば1964年の東京オリンピックの時期に突貫で作られた首都高速。
土地の買収に時間をかけられないために江戸城のお堀だった川の上に高架橋を設置したり、あるいは川の水を抜いて川底に道路を通したり。
そのせいで急カーブが連続し、都市の中をまるで生き物のようにうねる世界的にも珍しい道路が完成しました。
ここでは実用性の話はおいておきますが、首都高の中でも複雑なジャンクションとして知られる箱崎ジャンクションは下から見上げると何本もの高架道路が複雑に入り組むことから
まるで大都会に現れたヤマタノオロチのようだと写真の撮影スポットとして有名です。

さらに、鉄道で例を挙げるなら中央線の御茶ノ水から四谷あたりまで線路と並行して進む神田川と外濠。
徳川幕府の時代に外濠として機能していた水路の土地を鉄道用地に転用したことで、土地の少ない都心を貫く中央線が実現できています。
都心を走る列車なのに車窓から見える風景は川と緑が多いという乖離がまた魅力的です。
特に御茶ノ水は、東京で2番目に古く地下浅い場所に建設された丸の内線が神田川水面ギリギリを渡っていく光景があまりにも有名です。

これらの特徴ある街並みも時間が経つとパリやニューヨークのようにさらに価値ある歴史的街並みへと変容していくのではないでしょうか。

人は自分が長年住んでいる街に対する魅力的な感情はどんどん薄くなるものだと思います。
しかし外からその街並みを見れば、非常に魅力的に映る可能性があります。

私は地方都市出身で大都市に憧れ、大都市の街並みを魅力的にとらえていたうちの一人です。

実際の街並みを保存することは容易ではありませんが、ジオラマならばそれが可能です。
魅力あると感じる現代の東京をジオラマの中に保存し、さらに俯瞰してもらうことでその魅力をより多くの方に感じていただくことが私の望みです。

最後に

普段生活する都市の風景に魅力を感じることができれば、ちょっと街中を歩くだけでも観光に来た気分になって都市生活を倍楽しむことができるはずです。
ぜひ少しでも共感いただき、ジオラマと合わせて現実の都市風景の魅力も楽しんでいただければ嬉しいです。

都市ジオラマがもっと見たい!という方には、「東京ジオラマ展」という展示イベントにお越しいただくことをお勧めします。
東京ジオラマ展はリアルな都市ジオラマが多数集まるイベントで、それぞれのジオラマが鉄道沿線別に展示されます。
もちろん私も新宿駅をはじめとしたたくさんのジオラマを展示しますが、他にも有名なジオラマ作家さんの作品が集結します。
きっと皆さまの縁のある地域のジオラマも展示されるのではないでしょうか。
次回の東京ジオラマ展は2025年2月に東京の日本橋で開催予定です。
イベントの詳細はまたこのサイト、ジオラマデザインでも発表される予定ですので、チェックしてみてください。

また、見るだけでは満足できない!という方はぜひジオラマを作ることもご検討ください!
このジオラマデザインというサイトにはジオラマ製作技法についての記事も投稿していますので、何かの参考になれば幸いです。
さらにこのサイトは誰でも投稿いただけますので、ジオラマ作ってみたという方はSNSだけでは伝えきれないその制作過程や思いを投稿してください。

東京ジオラマ展やジオラマデザインを通じてジオラマに興味を持つ人が増え、より多くのジオラマが生み出されていけば嬉しい限りです。
もちろん今後も私は皆様の作品に刺激を受けながら都市ジオラマを作り続けていきます。

#都市ジオラマ

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